あさぎり通信R-1 冬の植物観察のすすめ

 新年あけましておめでとうございます。所長の井出暢一です。皆様には、当センターの運営・管理につきまして、日ごろから格別のご支援・ご厚情を賜り、心より感謝申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

 朝霧野外活動センター所長に就任して3年目、その時は新型コロナウィルス感染症の影響により、臨時休所するような事態でした。利用人数の大幅減少が2年続き、今年度はだいぶ回復してきましたが、それでも最盛期の2/3程度となっています。そんな中、新しい年を迎え、気持ちも新たに何かに取り組んでみようと思い立ち、「あさぎり通信」を更新していこうと考えました。タイトルを「朝霧通信」から「あさぎり通信」にちょっぴりリニューアルして…。

 さて、これからの「あさぎり通信」では、当センターの主催事業や朝霧の自然などの様子を紹介していきたいと考えています。今回は朝霧の「冬の植物観察」についてです。冬は木々や草花の葉が落ち、辺り一面茶色っぽくなりますが、視点を変えてみると冬ならではの植物観察が楽しめます。そのヒントを教えてくれるのが、絵本の「ふゆめがっしょうだん」(冨成忠夫、茂木 透=写真/長 新太=文/福音館書店)です。冬芽(とうが)は「越冬して春になって成長する芽(広辞苑)」のことです。それでは、当センターキャンプ場の冬芽を紹介したいと思います。

 まずはアジサイ。どこでも目にすることができ、花の時季には色とりどりの姿を見せてくれますが、冬芽も負けず劣らず実に楽しい気持ちにさせてくれます。顔のように見える部分が、落葉の柄が付いていたところで、葉に養分を送っていた管の断面が目や口のように見えます。この顔の上にある円錐形でちょっとカラフルなものが冬芽になります。まるで王冠を被った凛々しい王子様のようであり、威厳のある髭の王様のようにも見えます。見る角度によってはハクション大魔王?と思える愉快な感じのものもあります。このように、見る人、見る角度によって様々な感じ方ができるのが、冬芽探しの特徴であり、楽しさです。

 続いてオニグルミの冬芽です。枝の先の冬芽、幹の中間とそれぞれに違う様子を見せてくれています。こちらも冬芽部分が立派な王冠のように見えます。そして、落葉の跡が実に面白いですね。みなさんは何に見えるでしょうか。私は鹿のような羊のような感じに見えます。また、落葉の跡がいくつも重なり、トーテムポールのようにようにも見えます。 

最後に、ミツマタの冬芽をご覧ください。ミツマタは和紙の原料となる木で、春先に黄色い花をたくさんつけます。冬芽、落葉の跡、横には春に咲く花のつぼみ、私の余計な感じ方は省いて、画像をご覧になりながらそれぞれで感じてみてください。

 今回紹介した、アジサイ、オニグルミは野鳥の池周辺、ミツマタは絵図山への遊歩道で撮影しました。他にも当センター内には、楽しい冬芽を持った木がたくさんあります。サンショウ、クロモジ、マユミ、ミズナラ、ヤマモミジ…。顔のようにも肉球のようにも見える冬芽が揃っています。

 冬芽観察は特別なものではなく、近所の公園や雑木林、庭の木など身近なところでできます。小さいので見落としがちですが、ちょっと注意して探してみてください。自分だけの冬芽が見つかれば、冬の植物観察の世界が広がると思います。

 おまけです。冬芽ではないですが、飛び忘れたヤマモミジの種を紹介します。2枚の羽が付いていて、羽の根元に種があります。2枚の羽がくるくると回り、タネを遠くまで運びます。皆さんは何に見えますか。私は「ナウシカ」が操る飛行機にように見えます。メーヴェというらしいのですが、風の流れを利用して滑空するというところが似ているような気がします。

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